意外と見えない患者の視点10

監修医からのメッセージ

アトピー性皮膚炎の患者さんはさまざまな悩みを抱えて診察室を訪れます。忙しい日常臨床の中では、患者さんの心の内を把握することは難しく、意外と見えていないと思われるのが「患者の視点」です。診療にこの「患者の視点」を取り入れ、少し患者さんの気持ちに寄り添ってみることは、患者さんとの信頼関係を築いていく上で、とても有用です。また、治療に行き詰まりや不安を感じている患者さんには、「患者の視点」に沿った指導・アドバイスが、アドヒアランス向上や不安解消の大きな手助けになることもあります。

ここでは具体的な悩みや思いを10選んで、「患者の視点」を取り入れた診療についてご紹介します。より良い診療を目指す中で、ツールの1つとしてご参考にしていただければ幸いです。

サノフィ株式会社では『そらいろレター プロジェクト』立ち上げ、そちらの中でアトピー性皮膚炎の患者さんから医師へ、悩みを簡潔にわかりやすく伝える『そらいろレター』を準備いたしました。『受験』『就職』『結婚』など19の生活シーンをキーワードとして、より具体的に目標を設定して治療に取り組んでいけるコミュニケーションツールとなっています。

そらいろレター プロジェクト そらいろレター プロジェクト

10の視点


1. 悪化したことについて語りづらいと思っている患者さんに

症状が悪化したことに罪悪感を持ってしまい、医師には報告しにくいという患者さんもいらっしゃいます。そういった方には「アトピー性皮膚炎は、どうしても悪化と改善を繰り返すところがありますからね」「でも、悪化してしまったら、また薬を使って治せばいいですから」といった、言葉をかけると安心されるようです。また症状の記録※をつけてもらい、そこに症状の変化や気持ちを書いてもらう等も、良いかもしれません。言葉での説明は苦手でも、文章ならしっかりと伝えることが出来るという方もいらっしゃいます。

※症状の記録:
サノフィ株式会社提供のアトピー性皮膚炎患者さん向けホームページ『そらいろレター プロジェクト』でもかゆみを記録していただくための「かゆメモリー」をご用意いたしました。


2.自分ではステロイドをきちんと塗っていると思っている患者さんに

治療に前向きに取り組まれている患者さんは、実は、あと少しアドバイスすることで、より良好なコントロールにつなげられるかもしれません。それは、ステロイドの塗る量や塗る範囲です。

診療ではときどき「どのように塗っていますか?」と聞いてみると良いでしょう。1FTUの換算を確認したり、「範囲は少し広めに塗る」「治ったと思っても、再燃しやすい場所は、少し長めに塗り続ける」といったポイントをご指導ください。


3.ステロイドをきちんと塗るのは負担だと思っている患者さんに

薬を塗ることを「歯磨き」のように、ルーティーンとして生活に根づかせるような、ヒントを伝えると良いでしょう。例えば脱衣所や洗面所に薬を置いて、お風呂上りや歯磨き後に塗る習慣にするなど、ごく簡単な工夫が大きな助けになることもあります。診療時間に余裕があれば、少し患者さんと話し合ってみてください。

また、患者さんの具体的な希望を聞き、要望に沿った目標を設定すると、治療の意欲を保ちやすくなります。目標は大きなものではなく、「夏にノースリーブが着たい」「お化粧を楽しみたい」「かゆみを抑えて、ぐっすり眠りたい」など身近で達成しやすいものにすると、成功体験を積み上げていかれ、理想的です。診療中にそこまで落とし込むのは難しい場合もあるかと思いますが、そのような場合は、『そらいろレター』※を活用して、事前に、患者さんに具体的な要望を書き出していただいてはいかがでしょうか。
※サノフィ株式会社提供


4.症状をもっと医師に理解してもらいたいと思っている患者さんに

治療に積極的で細かく経過を伝えたいタイプの患者さんやもっと医師に理解してもらいたいけれどあまり話すことが得意ではない患者さんには、症状の記録※(日誌)の活用が有効かもしれません。患者さんには「○○さんのように詳細を記録してくださる方は、悪化の原因も見つけやすいですし、治療に前向きなことはとても良いことですね」などとお伝えすることで、良い励みにもなるでしょう。

※症状の記録:
サノフィ株式会社提供のアトピー性皮膚炎患者さん向けホームページ『そらいろレター プロジェクト』でもかゆみを記録していただくための「かゆメモリー」をご用意いたしました。


5.悩みを理解してもらえずふだんから孤独を感じている患者さんに

自分だけが苦しんでいると思うと、孤独感が募りますので「今、アトピー性皮膚炎の患者さんは、とても多いですから。○○さんと同じような悩みを持つ方は、少なくないですね」などと語りかけ、大勢の仲間がいることを伝えると、気持ちが和らぐかもしれません。患者交流会を紹介することも非常に有用ですし、悩みを共有できる場があることを、知っていただくことは重要です。


6.医師の話を理解してきちんとステロイドを使っているが、やはり治療にいくばくかの不安を抱えている患者さんに

ステロイド外用剤についての正しい知識を伝えるとともに、医師が副作用をしっかり管理するという姿勢を示すと、患者さんはだいぶ安心されるようです。「副作用が出ているかどうかは、診察の時に私がしっかりチェックしますので、心配せずにきちんと薬を塗って下さいね」「危険な副作用が出ることはまずないですし、仮に、ちょっとした副作用が出ても私がちゃんと気が付きますから」などと伝えては、いかがでしょうか。またどうしても患者さんの不安をぬぐえない場合は、患者さんの納得のいく治療から開始するという姿勢も重要になってきます。


7.強いかゆみをがまんできずに掻いてしまうことに、自分の弱さを感じている患者さんに

「掻いてはいけない」というのは結構な心のストレスになっているようです。掻くことは、「気持ち良さ」ももたらすため、掻いてしまうのは仕方がないことで、掻くことは認めてあげて、「強く掻かない」「10回に1、2回は掻くことをやめてみる」といった負担の少ない指導も取り入れ、掻くことに罪悪感をもたせないことも大切です。


8.皮膚の劣等感から、自分を否定的に考えがちの患者さんに

「そういった気持ちになってしまうことも、ありますよね。他のアトピー性皮膚炎の患者さんからも、同じようなお話を聞くことがありますよ」など、悩んでいるのは一人ではないというメッセージを伝えると、少し気持ちが軽くなるようです。またそういった劣等感によるストレスが、かゆみの悪化原因であることを、患者さん自身に気づいていただくことも重要です。「何かに集中して夢中になっている時や、楽しい時にはかゆみをあまり感じないということは、ありませんか?」「楽しい時にはかゆみも感じにくく、逆にストレスがあるとかゆみを感じやすくなりますので、うまく気持ちを切り替えるようにしてくださいね。」などと、とお話ししてみてください。


9.体質を変えるために自分でいろいろ試してみたい、または試している患者さんに

現在の治療では手詰まり感があると感じている患者さんは、民間療法やサプリメントなどに希望を見出そうとする場合があります。そういった患者さんには、ステロイドの種類を変える、塗り方を見直す、薬剤を変えるなど治療法はまだ他にもあることを伝えると良いでしょう。これらの治療は根拠(エビデンス)がある治療である点を伝え、根拠のない治療に頼る気持ちを抑えるようにします。「民間療法などは全てが悪いとは言えないのですが、根拠がなく、値段も高いものも多いので、あまりお勧めしていません」「きちんとした治療法で、まだ試していないものがありますから、様子を見て必要があれば、お薬を変えることも考えてみましょう」「良くなる方法はまだいろいろありますから、相談しながらやっていきましょう」などと伝えると、患者さんはまた医師の治療に希望を持つようになります。


10.こどもの治療について、「かわいそう」「将来が不安」と否定的なことばを言ってしまう親御さんに

親御さんが「かわいそう」と言い続けることによって、お子さんが自分はかわいそうな人間だと思い込んでしまう場合があります。小学生ぐらいまでのお子さんの親御さんには「お子さんには、アトピー性皮膚炎があってもなくても、関係なく大切な存在だということが伝わるといいですね。」「かわいそうと言い続けると、かえってお子さんが自信をなくし悪影響になってしまう場合ありますので、自信を付けさせてあげられるような方向を目指してください。」などと伝えてください。中学生以上のお子さんの場合は、親の役割について「お子さんが自ら治療することをサポートする」「遠くから見守る」などをキーワードに、当人の意思を尊重する姿勢が重要であることを伝えると良いでしょう。


SAJP.DUP.18.01.0069