医師のためのAD関連用語集
C
CD40L
(別称:CD154)
B細胞や樹状細胞等に発現するCD40のリガンドで、主に活性化T細胞表面に発現する膜タンパク質。TNFスーパーファミリーに属する共刺激分子。B細胞におけるCD40-CD40Lの相互作用は、B細胞のクラススイッチと抗体産生に必須である1)。またCD40Lは、典型的な骨髄系樹状細胞(mDC)活性化因子として知られており、CD40Lにより活性化され成熟したmDCは、MHCクラスIIをはじめとした活性化分子発現を誘導するとともに、Th1分化誘導作用を示すIL-12やTh1細胞遊走性ケモカインCXCL10/IP-10の発現を誘導することがin vitro studyで示されている2)。
参照:
1) 高津聖志ほか 監訳: 免疫学イラストレイテッド. 原書第7版. 南江堂. 2009, p300.
2) 有馬和彦ほか: 実験医学. 31(17): 2772-8.
I
M
O
OX40L
(別称:CD252)
活性化T細胞に発現するOX40のリガンドで、主として樹状細胞などの抗原提示細胞に誘導的に発現する膜タンパク質。TNFスーパーファミリーに属する共刺激分子。Th2分化因子として働き、IL-12非存在下でTh2分化を促進することが示されている。TSLPで成熟化された骨髄系樹状細胞は、細胞表面にOX40Lを発現し、Th2分化を促進する1)。この経路により分化したTh2細胞は、IL-4/5/13といった通常のTh2サイトカインを産生するが、抑制性サイトカインIL-10は分泌せず、一方で大量のTNFを分泌することがin vitro studyで示されていることから、炎症性Th2細胞と称されている2)。
参照:
1) 有馬和彦ほか: 実験医学. 31(17): 2772-8.
2) Liu YJ, et al.: Annu Rev Immunol. 2007; 25: 193-219.
T
TARC
(thymus and activation-regulated chemokine)
(別称:CCL17)
h2細胞遊走性ケモカインの1種で、受容体CCR4が発現するTh2細胞や制御性T細胞を遊走させる1-2)。樹状細胞、内皮細胞、角化細胞、線維芽細胞などにより産生され、胸腺には恒常的に発現している1)。その産生はIL-4/13及びNFκB活性化刺激により誘導される。その発現はアトピー性皮膚炎の重症度と相関することから3)、その病勢や診断の血清マーカーとなっている。
参照:
1) Saeki H, et al.: J Dermatol Sci. 2006; 43(2): 75-84.
2) 中村晃一郎: MB Derma. 2014; 224: 65-69.
3) Shimada Y, et al.: J Dermatol Sci. 2004; 34(3): 201-8.
TLRリガンド刺激
(Toll様受容体
リガンド刺激)
TLRは自然免疫において病原体の分子種の識別を担っており、12種類ほどが同定されている1)。上皮細胞においてTLRが、細菌、ウイルスあるいはその成分を認識すると、IFN-αやIL-6が産生され、初期免疫反応が引き起こされることがin vitro / in vivo studyで示されている1)。通常、アトピー性皮膚炎ではIgE値が上昇するが、IgEはマウスにおいて肥満細胞のTLR2リガンド刺激を抑制するとの報告があり2)、アトピー性皮膚炎患者では、微生物成分の認識力低下が易感染性の一因となっている可能性がある3)。
参照:
1) Kumar H, et al.: Biochem Biophys Res Commun. 2009, 388(4): 621-5.
2) Mizukawa Y, et al: Exp Dermatol. 2007, 17: 170-6.
3) 戸倉新樹 編: ファーストステップ 皮膚免疫学, 2010, p83-91.
TSLP (thymic stromal lymphopoietin)
IIL-7と最も相同性が高い短鎖サイトカインである。主に上皮細胞から産生される1)。TSLPはもともとリンパ球の分化にかかわる因子として同定されたが、主としてヒトでは樹状細胞の機能調節に関与し、獲得免疫をTh2型免疫応答に傾けることで、アレルギー性炎症形成に寄与すると考えられている1)。ランゲルハンス細胞や骨髄系樹状細胞はTSLP刺激により活性化され2)、Th2分化を促進する抗原提示細胞として働くと考えられている3)。
参照:
1) 有馬和彦ほか: 実験医学. 31(17): 2772-8.
2) Liu YJ, et al.: Annu Rev Immunol. 2007; 25: 193-219.
か
クラススイッチ
B細胞において産生する免疫グロブリンのクラスが、別のクラスの免疫グロブリンを合成するようになる過程1)。免疫グロブリンには5つのクラス(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE)が存在するが、病原体が体内に侵入した場合、最初に産生されるのがIgMである1)。クラススイッチを誘導する細胞内シグナル(サイトカインによる活性化)が入ると、免疫グロブリン遺伝子の定常領域に組み換えが生じ、抗原特異性は保ったままIgGやIgAなど他の免疫グロブリンのクラスへと変換される。クラススイッチを誘導するサイトカインはTh1細胞由来のIFN-γ(IgG)、Th2細胞由来のIL-4、IL-13(IgE)などがある1-2)。
参照:
1) 多田富雄(監訳):免疫学イラストレイテッド(原書第5版), 南江堂, 2000, p.104, 167
2) 鍔田武志:実験医学. 27(20), 2009: 3246-51.
グループ2 自然リンパ球 (ILC2)
自然リンパ球(innate lymphoid cell: ILC)は抗原特異的受容体をもたないがヘルパーT細胞と同様のサイトカインを産生し、グループ1~3の分類が提唱されている1)。自然リンパ球は貪食細胞とともに自然免疫を担当し、感染に対する初期防衛などにおいて重要な働きを担っている。グループ2自然リンパ球(ILC2)は上皮細胞から産生されるIL-33、IL-25、TSLPによって活性化され大量のIL-5やIL-13等のサイトカインを放出することがin vitro / in vivo studyで示されている1)。Th2の分化を待たず、ILC2や好塩基球によって形成されるアレルギー病態を自然型アレルギーと呼ぶことが提唱されている1)。
参照:
1) 加畑宏樹ほか:実験医学. 31(17), 2013: 2779-2784.
抗原提示
抗原提示細胞が、外因性および内因性タンパク抗原を細胞内で分解して、その断片をMHC分子に結合させて細胞表面へと提示し、それをT細胞が認識する過程1-2)。細胞外に存在する抗原や細菌などの外因性抗原は、抗原提示細胞にエンドサイトーシスにより取り込まれ分解された後、MHCクラスII分子により細胞表面へ提示される。一方、ウイルス、癌抗原など、細胞内で合成・分解される内因性抗原は、MHCクラスI分子により提示される。なお樹状細胞は、外因性抗原をMHCクラスⅡ分子のみならずクラスⅠ分子によって提示する経路も存在することが知られている(クロスプレゼンテーション)2)。
参照:
1) 伊藤正男 編: 医学書院 医学大辞典. 医学書院, 2003, p783.
2) 田中良哉 編:免疫・アレルギー疾患イラストレイティッド. 羊土社, 2013, p40-49.
骨髄系樹状細胞 (別称:ミエロイド 樹状細胞:mDC)
樹状細胞は、分化経路の違いにより、骨髄系幹細胞由来とリンパ球系幹細胞由来に分けられる。大部分の樹状細胞は骨髄系樹状細胞である1)。骨髄系樹状細胞は、典型的な活性化因子であるTLR3/4/8リガンドやCD40Lにより活性化されて成熟した場合、MHCクラスIIなどの活性化分子の発現を誘導するとともに、主にTh1型の免疫応答を誘導する2)。しかしTSLPにより成熟された場合は活性化するものの、Th2型の免疫応答を誘導するという特徴がin vitro studyで示されている3-4)。
参照:
1) 松島綱治ほか 監訳: 分子細胞免疫学. エルゼビア・ジャパン株式会社, 2008, p26.
2) 有馬和彦ほか: 実験医学. 31(17): 2772-8.
3) Liu Y, et al.: Ann Rev Immunol. 2007; 25: 193-219.
4) Ito T, et al.: Allergol Int. 2012; 61(): 35-43.
な
内因性 アトピー性皮膚炎
IgEを介したアレルゲン感作のないアトピー性皮膚炎。IgE値が正常域かそれに近く、環境アレルゲン・食物アレルゲンに対する特異的IgEを有さない1)。IgE高値の通常のアトピー性皮膚炎(外因性アトピー性皮膚炎)の発症には、バリア異常による皮膚へのアレルゲン侵入が重要だが、内因性の場合はバリア機能が比較的保たれており、フィラグリン遺伝子変異率も低く、Th2サイトカインIL-4、IL-13の発現もさほど高くないが、金属アレルギー保有率が高い1-5)。末梢血ヘルパーT細胞は健常人よりTh2型に偏位しているが外因性ほどではなく、IFN-γ産生性のTh1細胞の割合が高い3)。タンパク質以外の金属等の抗原によってTh1応答が活性化されて、IFN-α再生が亢進している可能性がある6)。
参照:
1) 戸倉新樹: 医学のあゆみ. 2016; 256(1): 30-34.
2) Mori T, et al.: J Dermatol. 2010; 162(1): 83-90.
3) Kabashima-Kubo R, et al.: J Dermatol Sci. 2012; 67(1): 37-43.
4) Miraglia del Giudice M, et al.: Allergy Asthma Proc. 2006; 27(6): 451-5.
5) Yamaguchi H, et al.: J Dermatol Sci. 2013; 72(3): 240-5.
6.) 久保利江子: 皮膚の科学. 2011; 10(Suppl.16): 38-40.
は
バリア異常
皮膚バリア機能の主な3因子は、①天然保湿因子フィラグリン等を含み皮膚の最外層を構成する角層、②角層直下の顆粒層で物理的に強固な構造を成すタイトジャンクション、③表皮において高い抗原提示能を有するランゲルハンス細胞で、皮膚には物理的にも免疫学的にも高いバリア機能が備わっている1)。バリア機能は、外界からの刺激や病原体、アレルゲンの侵入を阻止し、侵入物があれば免疫的に対抗し、また水分や熱などを保持しホメオスターシスを保つよう働いている2)。この構造や働きが障害されると、皮膚は乾燥し、アレルゲンや微生物(黄色ブドウ球菌等)が皮膚内に侵入しやすくなり、これら侵入物に対する異常な免疫応答によりアトピー性皮膚炎では炎症が惹起される3)。
参照:
1) 乃村俊史: Mebio. 2015; 32(4): 10-15.
2) 久保亮治ほか: 実験医学. 2011; 29(Suppl.10): 1634-40.
3) 森田久美子ほか: アレルギー・免疫. 2016; 23(2): 250-9.
フィラグリン
表皮細胞で産生される塩基性タンパク質の一種で、角層を形成する。天然の保湿因子として、表皮の保水やpH維持、紫外線防御にも寄与しており、皮膚バリア機能の要を担っている1-2)。前駆体のプロフィラグリンとして生合成され、角層が形成される段階で分解されてフィラグリンが作られる。フィラグリンはケラチン線維と相互作用し凝集し、規則正しい線維束からなるケラチンパターンを形成する。フィラグリンがさらに分解されて、アミノ酸およびその誘導体になったものが、天然保湿因子(natural moisturizing factor: NMF)である1-2)。
参照:
1) 戸倉新樹 編: ファーストステップ 皮膚免疫学, 2010, p74-82.
2) Sandilands A, et al.: J Cell Sci. 2009; 122(Pt9): 1285-94.
ペリオスチン
細胞外マトリックスタンパク質の1種で、線維化やコラーゲン線維の形成を誘導する1-2)。コラーゲンⅠやフィブロネクチン、テネイシンCなどの他の細胞外マトリックスタンパク質と結合し、組織の構造維持、病的状態における線維化に関与する。ペリオスチンはまた、細胞と結合することで細胞機能を調節するマトリセルラータンパク質である。アトピー性皮膚炎においては、Th2環境下、IL-4やIL-13の刺激により線維芽細胞から産生され、インテグリンを介して角化細胞を刺激し、TSLPなどの炎症性サイトカインの産生を誘導し、Th2型免疫応答を増幅させるというモデルが提唱されている2-3)。
参照:
1) 中村晃一郎: MB Derma. 2014; 224: 65-69.
2) 有馬和彦ほか: Cytometry Researc, 2015, 25(1):13-8.
3) 増岡美穂ほか: 化学と生物. 2013; 51(5): 274-6.
み
ら
ランゲルハンス細胞
表皮に存在する樹状細胞の1つ。抗原提示能を有し、接触アレルギーにおいて重要な役割を果たす。角層の直下の顆粒層には、細胞と細胞を強固につなぎ合わせたタイトジャンクションがあり、バリアとして機能している。表皮ランゲルハンス細胞は、このタイトジャンクションの内側の表皮に存在するが、角質層バリアに障害が起こり何らかの危険信号が発せられると活性化し、タイトジャンクションの内側から外側へと樹状突起を伸長させて、抗原を取り込む1-2)。そしてナイーブT細胞に抗原提示し、免疫応答を誘導することがin vivo studyで示されている3)。
参照:
1) Kubo A. et al.: J Exp Med. 2009; 206(13): 2937-46.
2) Yoshida K. et al.: J Allergy Clin Immunol. 2014, 134(4): 856-64.
3) 戸倉新樹 編: ファーストステップ 皮膚免疫学, 2010, p11-24.
MAT-JP-2008521-1.0-12/2020